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山手歯科クリニックの物語

7年目の再会

 

山手歯科クリニックの齋藤和重先生からご連絡をいただいたのは2006年10月のことです。山手歯科クリニックにはいきたくなる歯科医院の取材で2000年の1月に訪問して以来ですから、ほぼ7年ぶりの再会となりました。
取材当時、山手歯科クリニックは再開業して3ヶ月め。サラリーマンを経験してサービスの重要性をしっかりと身に付けた齋藤先生が考えられた医院は、明快な空間構成と動線、美容院のようなおしゃれなインテリアで、まさにいきたくなる歯科医院だと感心したことを覚えています。
7年を経て医院がどのように変わっているかと興味津々で訪ねてみると、第一印象は変わっていないということでした。歯科医院に限らず、何年かして訪ねてみると当初のイメージが変わっている場合が多いものです。それはそれでその医院らしさが出てきたとも言えますが、当初考えたコンセプトが忘れられてしまうというケースも多々あります。ところが、山手歯科クリニックでは、7年前のおしゃれなイメージがそのまま維持されています。これには感心しました。

変わるものと変わらないもの

 

一方、変わっている部分もあります。山手歯科クリニックでは、2005年に一部を改修しました。医院の奥の部分にOP室と予防診療室を増設したのです。より高度な治療ができるようにすることと、予防に力を入れるという2つの方針にそった改修です。これらの部屋は床、壁、天井とも真っ白で、OP室にはシンボルカラーのエメラルドグリーンの家具を配して、既存部分よりさらにおしゃれになっています。
この変化に感心しました。しかし、それ以上に感心したのはスタッフの皆さんのやる気です。スタッフの皆さんが患者さんに喜んでいただくにはどうしたらよいかを真剣に考えているのです。この大きな変化が、医院のリニューアルにもよい影響を及ぼしています。齋藤先生もコンセプトの部分はしっかりおさえながら、スタッフの皆さんの意見を最大限に取り入れて、それを実現するように努めていらっしゃいます。

最初はプチリニューアル

 

今回、齋藤先生から私達に依頼があったのは、待合室をリニューアルし、カウンセリング室を設置したいということでした。自費率を高めるためにも、ユニットでカンセリングするのではなく、別室できちんと説明できるようにしたいというご要望です。既存の家具などは、まだきれいなのでなるべく残したいとご希望です。
先生のご要望を受けて、私達は基本設計に取り掛かりました。ところが、患者さんの動線がなかなかうまくいきません。特に一番奥にあるOP室に行くには、受付の脇の通路から入り、消毒コーナーやX線室の前を通り、しかも他のユニットの治療風景を見ながら行かなくてはなりません。最も高い治療費を払ってくださる患者さんの動線としては望ましいとは言えません。また、カウンセリングを受けた後、待合室を通って治療室に行くのもできれば避けたいところです。
それは前回のリニューアルできれいにゾーンが区分されていた部分がくずれ、バックヤードも治療や予防のスペースとなったことが原因です。待合室だけのプチリニューアルでカウンセリング室をつくることは簡単ですが、それでは今後の治療に禍根を残すことになりかねません。

より使いやすくするために

 

いくつかの案をもとに、齋藤先生やスタッフの皆さんと、どういうふうに患者さんに動いていただくのが理想的かを話し合ううちに、一つのアイデアが生まれました。それは、ブース@とブースAの間に通路を取るということです。幸いにも山手歯科クリニックで使っているユニットは、ブースの幅が狭くても対応できるタイプです。そこでそのユニットを使っている3つのブースの幅をそれぞれ25cmずつ狭くし、その分をまとめて通路に当てることにしたのです。そうすればOP室に向かう動線ができます。しかも、カウンセリング室も、治療室の中の通路から入るようにすると、待合室にもどらなくても各ブースに行くことできるようになります。この通路によっていろいろな問題を解決することができそうです。 しかし、そのためには各ブースもユニットも、そして受付も少しずつ動かす必要があります。これは工事としては大工事で、時間も費用も大幅に増えてしまいます。
検討の結果、「工事はたびたびはできないので、やるならきちんとしたものを作りたい」と齋藤先生に決断していただきリニューアル案が完成しました。ですが……、まだまだ思いもよらない展開が続きます。

5月の連休にむけて

 

出来上がったリニューアル案は、ブースの間に通路を取り、通路の待合室側にカウンセリング室をつくるというものです。待合室はこれまで一人掛けの椅子が置かれていました。このうち、奥のほうは窓側にカウンターを設置し、外に向かって座るようにしました。その他、ご要望に応えるようにリニューアルをするものとなっています。
基本設計が終了したのが1月。2月から実施設計に着手し、3月中旬には終了しました。その後、歯科医院の工事をよくやっている建設会社3社から見積を出していただきました。この時点では、工事期間は5月の連休中、4月29日から5月5日の一週間と設定しました。かなり無理のある工程ではありますが、一日でも休みを少なくしたいという齋藤先生の意向を汲んでの設定です。
1週間の見積期間の後、各社の見積が出揃いました。
ここで2つの問題が出てしまいました。一つは予算が想定よりかなり高いということ。もう一つは各社とも工期が足りないと言ってきたことです。
予算がオーバーした時の対応方法は2つあります。一つは予算内に納まるように設計内容を見直すこと。もう一つは予算を増やしていただくことです。齋藤先生と相談したところ、「やるならきちんとしたものを作りたい」という先生の意向は変わりません。設計はほぼ、もとのまま行うことになりました。
工事期間については、無理な工期で行うと工事の出来に悪い影響を及ぼすことも考えられます。ただし、5月に2週間も休むわけにはいきません。そこで、工期を2つにわけることにしました。1期工事を5月の連休に行い、2期工事は8月の夏休みの時期に行うことにしました。第1期工事では待合室周辺とX線室、医局を工事し、第2期工事で診療室の工事をすることにしました。

思いがけない要望

 

5月の連休中の工事は順調に終わり、あとは8月の2期工事を残すだけとなりました。
ところがその後に、齋藤先生から思いがけないご要望がありました。
「もうひとつカウンセリング室をつくることは無理ですか。」
お聞きすると、OP室で診療する患者さん、つまり自費の患者さん向けに、さらにグレードの高いカンセリング室をつくり、そこでカウンセリングもできるし、術後の休憩もしていただきたいとのことです。先生の言われる主旨はよく判ります。しかし、38坪という限定されたスペースの中でどこまでできるか……。まずは持ち帰って検討することにしました。
さまざまな案を検討した結果、できあがったのが最終案です。待合室の5人掛けのカウンターを3人掛けとし、カウンセリング室を窓際に寄せます。そして、OP室とブース@の間に中待合を設置することができました。待合室の人数は減るものの、カウンセリング室が窓に接するので開放的になりました。中待合は、窓はありませんが落ち着いた雰囲気となります。
これまでの案では、受付の家具は既存のものを利用することにしていました。しかし、使い勝手が悪く、デッドスペースがあることが問題となっていることが判りました。そこで、受付の家具も完全に作り直すことにしました。その他、既存の家具が新しいインテリアに不釣合いになるのが目についてしまうので、そういったものも、今回作り直したり、扉を交換したりしました。ユニットや家具も生地を張り替えています。

考える時間

 

今回のリニューアルは、当初は5月の連休だけの工事で終わるつもりでいました。しかし、5月の連休と8月の夏休み、9月の残工事と足掛け5ヶ月の工事期間となりました。振り返ってみると1期工事と2期工事の間に3ヶ月半もの時間があったことが、いい方向に作用したと思います。1期工事で出来上がった部分を体験しながらじっくりと考える時間があったからです。
齋藤先生は、治療していくにあたり、患者さんへのサービスを突き詰めていくと、どんな形が良いかをもう一度じっくり考えることができたのだと思います。そして、カウンセリングを2ヶ所設置するというアイデアを思いついたのでしょう。
また1期工事で待合室は見違えるようになりました。そして患者さんの評判もよく、スタッフの皆さんもますますやる気になったことと思います。そうなると、既存の部分を中途半端に残すことがいいかどうかが、気になり始めたのではないでしょうか。スタッフの皆さんの意見を聞いてみると、けっこう我慢して使っていたことも判ってきました。「やるならきちんとしたものを作りたい。」齋藤先生は何度もそう決意されたのだと思います。
結局、1期工事でつくった待合室のカウンターは一部をカットせざるを得なくなりました。しかし、それ以上の価値を生むことができました。

文字が透けるガラス面

 

山手歯科クリニックは道路に面して待合室があります。患者の立場ではプライバシーが守られることは安心感があります。一方、初めて入る時には、院内の様子が見えることが安心感につながります。
リニューアル前もその点は工夫されていて、ガラスにはフィルムが貼られ、上部の隙間から壁上部の間接照明が見えるようになっていました。しかし、ガラスに面して椅子が置かれていたため、外から見るとガラスに映るシルエットがあまり美しくありませんでした。また、この面は日当たりが悪いためなんとなく歩道は暗い印象となっていました。
今回のリニューアルでは2つの工夫をしています。
一つは、ガラスのフィルムを白いものに貼りなおし、そこに「YAMATE DENTAL CLINIC」の文字を切り抜きました。文字はちょうど6文字ずつだったので、1枚のガラスに均等に割りつけることができました。文字の間には、シンボルカラーのロゴマークをアクセントに入れました。このデザイン案をスタッフの女性の皆さんにお見せすると、皆いっせいに「かわい〜い」と言っていだけました。若い女性に受けるデザインは大切なポイントです。
また、ガラス面の下半分には、外部を照らす光壁としました。この部分はメンテナンスができないため、電球の交換が10年間必要なく、消費電力も少ないLEDを使った発光パネルとしました。昼はそれほど目立ちませんが、夜には歩道を明るく照らします。
白いフィルムは入口のドアには貼らず、文字だけが貼られています。ドアを通して待合室や受付を見ることができ、医院の雰囲気を知ることができます。この文字はエントランスの中の両側のガラスにも貼られています。文字が二重三重に重なって見えて不思議な雰囲気となっています。

おしゃれな看板

 

道路に面したガラスの1枚は内部が洗口コーナーなので全く違うデザインとしました。内照式の看板を設置し、イメージキャラクターとインテリアの写真をあしらって、内部の様子が判るようにしています。これは初めての患者さんにとってはだいぶ敷居を低くしてくれます。しかも、医院の雰囲気と看板のデザインが一致していなければなりません。これはホームページやリーフレットにも言えます。統一感のあるデザインとすることが求められます。
スタンド看板も内照式看板と同様のデザインとしつつ、こちらは診療内容が判るものとしました。

いろいろな場所がある待合室

 

リニューアル前の待合室は、道路側のガラスを背に一人がけの椅子が全部で9脚並んでいました。なかなかおしゃれな雰囲気でよかったのですが、問題がないわけでもありませんでした。それは、患者さんと受付が正対するために、受付の人たちが常に見られているように感じてしまうことです。少し待ち時間が長くなると、患者さんと目が合うのが気になっていました。患者さんを診療室に案内する時も、患者さんの前を歩かなければならず、お互いに気を使ってしまうのではないかという心配もありました。また、待合室では雑誌などを読むより、治療の情報をじっくりとみたいと思う時があります。それに応えてくれる場所があるといいと思います。
今回のリニューアルでは待合室の一部をガラスに面したカウンター席にしました。患者さんはガラスに向かって座るので、受付とは視線を合わせなくても済むようになりました。ただ、入口の両脇のスペースはカウンターにすることができないので、以前のまま残しています。
待合室の一部にカウンセリングルームを設置せざるを得ませんでしたので、待合室の席数は7席になりました。カウンター席が3席、エントランスの両側にそれぞれ2席づつの配置となっています。待合室の席が減っても、カウンセリングルームなど、内部の部屋が増えたので、そこに患者さんに入っていただけば、待合室で長い時間待っていただくこともないという判断で席数は少なくしました。いろいろな席があり、思い思いの待ちかたができる待合室となりました。

待合室の情報提供

 

エントランス脇の席では、目の前の壁に設置したモニターで、歯科治療の映像を見ることができるようにしています。
また、カウンター席側の壁には、特注で歯の模型を展示するケースを作りました。内部には照明も組み込んで、治療の模型と値段を簡単に比較できるようにしています。他の患者さんは背を向けているので、気にしないで模型を見ることができます。
待合室の壁にはポスターなどの張物をなくしました。唯一、ポスターケースを設置し、そこだけは貼ることができるようにしています。全体がおしゃれなので、ポスターケースにも絵になるものを1枚貼るだけとなっています。

舞台のような受付

 

受付は、患者さんが最初に接する医院の顔ともいうべき所です。受付の方に笑顔で迎えていただき、きちんと応対していただけるとその歯科医院への信頼度も高まります。
それと同時に受付廻りがそれに相応しく作られていることも必要です。受付はお金を扱う場所でもあります。しかも、自費治療ともなれば高額のお金を扱います。そういう場所にいろいろなものが置かれていたり、張り紙だらけではどうでしょうか。扱うお金に比例した雰囲気とすることが必要ではないでしょうか。
今回のリニューアルでは、当初、受付の家具は位置を動かすだけで、そのまま利用することを予定していました。
しかし、受付廻りの機能や現状の細かい問題点を話し合ううちに、既存の家具を再利用することでは問題を解決しにくいことが判ってきました。既存家具の移動に相当な費用がかかることも判りました。そこで、受付カウンターは新たに作ることに。カルテ棚などは扉を付け替え移動し、使いにくかったところは新たに棚などを設置しています。
新しいカウンターは、前面を光壁にして、明るさと高級感が出るようにしました。受付内部はすべて濃い色の木としています。やや暗く感じますが、これは舞台でスポットライトをあびる役者のように、受付の方が浮き立つことを意図しています。
カウンター内部も、開業後7年を経て増えてきたさまざまな機器類を整理し、作業がしやすいように作り変えました。

カウンセリングルーム

 

歯科医院に行って、治療の説明を受ける時、ユニットに座ったまま、先生の顔も見えずに後ろや横から説明してもらう歯科医院が多いと思います。しかし患者の立場では、先生を怒らせては大変なので言うとおりにせざるを得ないという雰囲気があります。それがユニットに座ってだと、ますます強調されるように感じられます。まして自費治療を行うかどうかを判断しなければならない時には、もう少しじっくりと説明を伺い、考える時間を持てる場所もほしいと思います。
今回のリニューアルの一番の目的がカウンセリングルームをつくることでした。そこで、齋藤先生やスタッフの皆さんと一緒に、患者さんにどのように動いてもらうのがよいかを検討しました。その結果、カウンセリングルームは治療の前に入っていただけるように、診療室の手前に設置することになりました。そのスペースを確保するため、待合室の一部をあてることになりました。そのおかげでカウンセリングルームは窓に面することができるように、明るい部屋になりました。
カウンセリングルームは、患者さんと説明者が正面で向かい合うよりは、90度くらいの角度で向き合うほうがお互いに圧迫感がなくていいと思います。最近は画像を見ながら説明することも多いので、一緒にモニターを見ながら話ができる位置にもなります。
このカウンセリングルームは1.8m×1.5mほどのスペースです。壁に向かって自然に角度が取れるように丸いテーブルを設置しています。正面の壁は木製のパネルとして、落ち着いた雰囲気としています。
この壁面には、先生やスタッフの皆さんが受けられた講習会の終了証などが貼られています。ただ、そのまま貼ると壁がいっぱいになるため、10cmから15cmほどの額縁を特注し、そこに終了証を縮小コピーして入れています。額縁の配置自体が絵になるようにしています。

アメニティルーム

 

山手歯科クリニックでは、最初はプチリニューアルとして検討をはじめました。しかし、プランを検討した結果、特別診療室への通路が確保できることが判り、よりよい雰囲気の部屋とすることができるようになりました。5月の連休の一期工事が終わったところで、それにふさわしい部屋のレイアウトは何かと齋藤先生はお考えになったのだと思います。まもなく「もうひとつカウンセリングや休憩に使える部屋をつくれないか」という課題をいただくことになりました。
いただいた課題をいろいろと検討した結果、特別診療室の前に中待合を確保することができました。そのために一期工事の一部をやり直すことになりましたが、それにかえられないほど必要な部屋だったのです。
この部屋は、その後アメニティルームという名前になりました。ここは、術後に休憩したり、自費治療についての説明をすることができる部屋です。 カウンセリングルームとは雰囲気を変えるために、壁は土壁としています。造り付けの家具は他の部屋よりグレードが高いピアノ塗装としています。椅子もイタリア製のデザイナーズブランド。この部屋も1.6m×1.8mほどのスペースです。決して広くはありませんが、落ち着いた雰囲気の部屋となっています。

半個室の診療室

 

私が診療を受ける時、気になるのはプライバシーです。自分が治療を受ける姿を見られたくないのは当然として、隣の治療の音や説明が聞こえてくることも気になります。
診療室の配置には、個室型、ブース型、オープン型があります。患者のプライバシーからは個室型が良いとはいえ、スペースや動線の関係からブース型やオープン型にしている医院が多いと思います。
 動線も、患者とスタッフの動線を分離するタイプと一緒にするタイプがあります。動線分離は理想のように言われますが、それもプライバシーが保たれればの話です。オープンなまま動線分離にすると、かえって治療中の顔が見られやすくなってしまうので私は落ち着きません。
その点、山手歯科クリニックでは、もともと半個室型の動線分離となっていました。待合室から各ブースには直接入ることができ、そこには扉が設置されていますのでプライバシーも確保されていました。とてもよいプランだと思いました。
今回のリニューアルでは、カウンセリングルームを設置するため、全体の配置が変わりました。そこで待合室から直接ブースに入ることをやめ、新たに設置した通路から入るようにしています。これによって待合室が落ち着いた雰囲気となりました。ブース4だけは通路に面していないため、待合室から入るようにしています。

ガラスのパーテイション

 

今回、各ブースの幅を少しずつ縮めて通路を確保しました。そのため、壁は薄くして少しでもブースを広く使いたいところです。そこで各ブースの間仕切壁はガラスのパーティションとしました。ガラスには不透明のフィルムを貼り、プライバシーを確保しています。フィルムには小さな四角い穴があいており、アクセントになると共に、フィルム越しに人の気配を感じられます。また、ガラスの上部にはフィルムを貼らず、天井面で視線が通るようにして、狭い雰囲気を和らげています。
 扉はガラスの引き戸にしています。狭いところで通路側へ開く扉にすると、ドアが人にぶつかることが心配です。かといって内開きにするとブースの中が狭くなってしまいます。その点、引き戸は狭くもならず、ぶつかる心配もないので安心です。この引き戸には、重力で自動的に閉まる金物を使っています。いちいち扉を閉めることを気にしなくても大丈夫です。

裏の通路も気持ちよく

 

もともと、動線分離が行われていた山手歯科クリニックですが、完全に分離できないところもあります。レントゲン室です。各ブースからからレントゲン室に行くには、スタッフ用の通路を通らざるを得ません。その時、治療中のブースを越えていく必要があります。また、この通路には消毒関係の流し台などもあり、それが患者さんに見られてしまうという問題がありました。
今回のリニューアルでは、動線が交差する問題は解決できません。しかし、これまで裏の通路だったところを、患者さんに気持ちよく通っていただけるように、流しや消毒棚に扉を付け内部が見えないようしました。足元には間接照明も設置し、これまでの裏の通路を表の通路として使えるようにしています。

レントゲン室

 

私がいろいろな歯科医院に診療に行って気になるのはレントゲン室です。滞在時間は短いものの、狭い部屋で一人になるのは不安なものです。しかし、レントゲン室は殺風景な部屋が多く、しかも換気が悪いためクロスの臭いがいつまでも消えないところも見てきました。なんとかしてほしいといつも思ってしまいます。
今回のリニューアルではレントゲン室のクロスを思いっきり明るく派手なものにすることを提案しました。スタッフの皆さんとクロスの見本帳を見ながらあれこれ選び、最終的にはピンクを基調に赤や黄色が散りばめられたものが選ばれました。とても派手で歯科医院らしくありません。しかし、明るい色彩が、思わず入ってみたくなる雰囲気を醸し出しています。

さらに一歩前に

 

今回のリューアルには設計から完成まで1年近くかかりました。その間、齋藤先生をはじめスタッフの皆さんもずいぶんと勉強をされました。セミナーに参加したり、メーカーのショールームにも何度も足を運んでいただきました。
皆さんとは、患者さんに気持ちよく診療を受けていただくにはどうしたらよいかを一緒に考えていただきました。検討するといろいろなアイデアが出てきて、内容は良くなっていきます。しかしその一方で、アイデアを実現するには工事費も膨らんでいきます。
齋藤先生は、スタッフの皆さんを信頼されて、それらのアイデアを取り入れられました。そして、患者さんのためにはどうしたらよいかを考え、安易な妥協をすることはありませんでした。
歯科医院に限らず、建物をつくる時には、予算が先にあるものです。予算のために計画を限定して考えざると得ないことも多いと思います。しかし、多少予算はオーバーしても、その費用をかけるだけの価値があるのにという場面もたびたびあります。その時、予算がないことを理由に諦めるか、一歩前にでるために費用を増やすかという決断を迫られることがよくあります。
齋藤先生は、一般企業で営業を経験されてから歯科医院を開設されたという経験の持ち主です。歯科医院も、経営の立場でも取り組んでいらっしゃいます。今回のリニューアルの工事費の増額についても、医院を発展させる投資として決断されたのだと思います。


株式会社コムネット Together 連載 「いきたくなる歯科医院」より転載

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