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入りやすいトイレ

入りづらいトイレ

歯科医院でトイレに入ろうとした時に、なかなか入りづらいトイレというものがあります。それはどんなトイレでしょうか。
まずあげられるのは、待合室で待っている人と、トイレが近い場合です。これは音が聞こえてしまいそうで気になります。事実、聞こえる場合も多く、聞かれる方も聞いている方も、いい気持ちはしません。
次に、ドアを開けた時に待合室からトイレの中が見えてしまう場合。これもあまりいい気持ちはしません。また、トイレから出た時に、待合室で待つ方と目が合ってしまうのも、なんとなく気まずいものです。
よそのお宅にお邪魔した時のことを考えると判りやすいと思いますが、リビングでお話をしている時にトイレに立ちたくなっても、トイレがすぐ隣にあると、なかなか入りにくいものです。トイレに行きたくても我慢してしまうこともあります。それと同じことが歯科医院のトイレでも言えそうです。
同様なことは洗口コーナーにも言えます。歯を磨いたり、化粧を直すところは、他人には、特に異性には見られたくないものです。
トイレに入った時に、音が聞こえないようにと、水を流しながら用を足す女性は少なくないでしょう。しかしこれは大変な水の無駄使いです。昨今の環境意識の高まりからは、水など流さなくても安心して入れるトイレが望まれます。そういえば、水を流さないようにと、水を流す音だけを出す機械があります。これは、本人はよいとしても、聞かされるほうは気持ちのよいものではありません。もっと気持ちよく入れるトイレにすることは、とても大切なことだと思います。

視線を遠ざける工夫

入りやすいトイレを考える場合、視線と音を考えることが対策のポイントとなります。
まず視線をさえぎるには、平面プランで工夫する必要があります。待合室からトイレの扉が見えないようにできないかを、洗口コーナーの配置と合わせて検討します。
どうしても扉が待合室に面してしまう場合、扉の開き勝手を変えるだけでも視線をさえぎる効果があります。通常、扉の開き勝手は、人の動線がスムーズになるように決めます。図のような場合、動線からは、左開きのほうが機能的です。しかし、この開き勝手ですと、トイレの扉を開けると、待合室からトイレの中が見えてしまいます。出てきた人と目が合いやすくもなります。これを逆に右開きとすると、やや入りにくくはなりますが、トイレの中は見えなくなります。

入りやすいトイレ1

同じようなことですが、意外と気づかれていないことに扉を開けた時に最初に目に入るものがあげられます。トイレの中に手洗器を設置する場合、扉を開けた時に便器が見えるようにするか、手洗器が見えるようにするかの問題です。できれば扉をあけた時には、便器が真っ先に見えないようにしたいものです。これは入る時の気分の問題もありますが、例えば扉の鍵を閉め忘れているような時にも、いきなり中の人を見ないで済むという効果もあります。

入りやすいトイレ2

蛇足ながら、トイレの扉は通常は外開きにします。これは、万が一、中で人が倒れた時に、内開きでは倒れた人が障害となって扉が開けられなくなることがあるからです。

音を小さくする工夫

次に、音の問題については、距離を取ることが第一の解決方法になります。音の大きさは距離の二乗に反比例します。したがって距離が2倍になると音の大きさは1/4、距離が3倍になると音の大きさは1/9になります。
どうしても距離が取れない場合は、音が壁に当たって屈折するようにしても音は減衰します。トイレの入り口が直接待合室に面しないようにするだけでも多少は違います。その場合、壁を吸音性のよい材料にするとなお効果的。一般に柔らかいものや多孔質なものは吸音性がよいので、例えばトイレ廻りの壁をやわらかいクロスにするとか、珪藻土のような多孔質の材料にすることが考えられます。逆にタイルなどは音が反射しやすいので逆効果となります。

入りやすいトイレ3

また、扉を二重にすることも効果的です。例えば、洗口コーナーを経てトイレに入るようにすれば、扉で音はかなり防ぐことができます。

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注意したい換気

しかし、どの歯科医院でも面積に余裕があり、トイレと待合室の間を十分に離すことができるわけではありません。ぎりぎりの面積で平面プランを考えざるを得ない場合もあると思います。そのような時には、扉で工夫をするしかありません。
扉でネックとなるのは換気扇です。トイレには換気扇が設置されます。特に建築基準法でシックハウスの規制がかけられるようになってからは、24時間換気が義務付けられています。特別な換気システムを使わない場合、トイレや浴室の換気扇を24時間運転し、部屋の空気がそこに流れるようにして換気を行う場合が多くなってきました。その場合、トイレのドアは空気が通らないといけないので、ガラリを設けたり、ドアの下に1〜2cmの隙間を開けたりします。この隙間から音も筒抜けになってしまうという欠点を持っています。
そういう場合には、トイレの扉は隙間なく閉じられるようにし、トイレ専用の吸気口を設置する必要があります。この吸気口は外部の空気が入るようにするのが理想的ですが、室内の空気でも問題はありません。音の問題が生じない場所から吸気するように検討することになります。

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扉や壁の作り方

トイレの扉は、通常は3mmぐらいの合板を両側に貼って作られます。これは壁のプラスターボードに比べて、はるかに防音性能は低いものになります。その時には、扉の中にロックウールなどの材料を入れると、防音性能があがります。
また、トイレの水を流す音のような低周波の音は、通常の壁を通して聞こえる場合もあります。トイレと診察室が壁1枚で隔てられていて、診察室で音が聞こえてしまうということもあります。こういう場合には、壁をある程度厚くすることによって解決できます。プラスターボードを二重に貼るとか、壁を防音壁の仕様にするとよいでしょう。

株式会社コムネット Together 連載 「いきたくなる歯科医院」より転載

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